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大阪地方裁判所 昭和27年(ワ)2696号 判決

原告 高田彦四郎

被告 福崎船渠株式会社

一、主  文

被告は原告に対し金二七万円及びこれに対する昭和二五年二月一五日より完済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。

原告のその余の請求を棄却する。

訴訟費用はこれを六分しその一を原告、その余を被告の負担とする。

この判決は原告において金九万円の担保を供するときは原告勝訴部分に限り仮に執行することができる。

二、事  実

原告訴訟代理人は、被告は原告に対し金三二三、〇〇〇円及びこれに対する昭和二五年一月一五日より完済まで年五分の金員を支払え、訴訟費用は被告の負担とするとの判決並びに担保を条件とする仮執行の宣言を求めその請求の原因として、原告は被告より昭和二四年九月一日事業資金の融通を頼まれたところ当時原告には手元資金がなかつたので知人である訴外大矢久四郎に依頼して同訴外人より被告に金三六三、〇〇〇円を貸付けたが、被告は返済期である同年一二月三一日右返済ができなかつたので、原告は仲介した責任上被告の了解のもとに被告に代つて同日右金員全額を代払した。而して被告は原告に対しその後内金四〇、〇〇〇円を返済したが残金三二三、〇〇〇円の支払をしないので右残金とこれに対する代払の翌日以降完済に至るまで民法所定年五分の割合による損害金の支払を求めると陳述し、被告の抗弁事実を否認した。<立証省略>

被告訴訟代理人は、原告の請求を棄却する、訴訟費用は原告の負担とするとの判決を求め答弁として、原告主張事実中被告が原告主張の如く訴外大矢久四郎より事業資金の融通を受けたことは認めるがその余の事実は全部争う。被告は右訴外人より昭和二三年一一月一七日以降昭和二四年五月二日までの間三回に亘り計金九〇〇、〇〇〇円を借受けたのであると述べ、抗弁として、(イ)被告は既に金六九〇、〇〇〇円を右元金の内入として弁済済であるから差引残債務は金二一〇、〇〇〇円であり、然も右は被告会社の営業状態不振のため支払可能の時期まで支払猶予を認められたのであつて、所謂自然債務である。(ロ) 利息については昭和二三年一二月一五日より昭和二四年一二月二九日までの間計金二三二、四一〇円を支払い爾余の利息は免除を受けたと述べた。<立証省略>

三、理  由

被告会社が訴外大矢久四郎より事業資金の貸与を受けたことは当事者間に争がない。原告は、右金員貸借は昭和二四年九月一日金三六三、〇〇〇円につき返済期同年一二月末日として成立したものであると主張するので按ずるに、その印影部分につき成立に争なく、且つこれにより爾余の部分の真正に成立したことの推認せられる甲第三号証に証人西村章の証言及び原告本人尋問の結果を綜合すると、被告会社は原告の仲介により右訴外大矢より昭和二四年初め頃以降金三〇〇、〇〇〇円宛を二回借り受けたが、右はいずれも元利共弁済を為したところ、更に同年九月一日金三〇〇、〇〇〇円を一箇月の期限で貸与受け、これに対し右弁済期を満期とする同金額の約束手形一通を振出したが、その後再三履行の延期を求めその都度利息を元本に組入れ手形の書替を為し、結局同年一二月一日元利合計を金三六三、〇〇〇円とし同年末これが支払を為すことを約したことが認められる。これに反する証拠はない。然らば被告と訴外大矢間には昭和二四年九月一日金三〇〇、〇〇〇円につき消費貸借が成立したのであつて、その余の原告主張にかかる金六三、〇〇〇円は右に対する利息であることが明らかである。而して原告本人の供述と同供述により成立の認められる甲第一号証によれば原告は同年一二月末日右元利合計金三六三、〇〇〇円を被告に代り右訴外人に立替支払を為したことが認められる。右認定に反する証人占部栄蔵及び被告会社代表者本人の供述は措信できない。その他これを覆すに足る証拠はない。

原告は右立替支払は被告会社の了解の下に為したと主張するけれどもこの事実を認めるに足る証拠なく、かえつて原告本人尋問の結果に徴するに、原告は自己が責任を負うことを条件として右訴外人より被告の前記債務の弁済期を昭和二四年一二月末日まで延期の承諾を得た関係で、被告において右期限に弁済の見込なく、右訴外人よりは弁済を迫られたので原告は止むなく責任をとり自身金策して同日右立替支払を為しその後昭和二五年二月中旬に至りこの旨被告会社に通告したことが認められる。右認定を妨ぐる証拠はない。すると原告の右支払は事前に被告の了解を得たものでなく、その委託に基かないでこれを為したものであり、従つて事務管理として為したものといわなければならない。而して元本の代払は反証なき限り債務者に有益にして且つその意思に反しなかつたものと認むべきであるから債務者はこれが出捐を返還すべき義務あること勿論であるが、その利息の代払についてはそれが利息制限法に超過しない限度においてのみ右元本同様に解すべきであるがこれを超過する部分は債務者において任意弁済を拒否することができるのであり、しかも債権者は裁判上これが履行を強要することを得ないのである以上、(この理は右利息を元本に組入れ約束手形を振出したときでも異としない。)右超過部分の利息の代払は債務者にとり有益費とは為し難く、従つて債務者に対しこれが償還を請求することはできないものといわなければならない。

してみると原告は被告に対しその代払にかかる右元本金三〇〇、〇〇〇円とこれに対する昭和二四年九月一日より同年一二月三一日まで利息制限法所定の最高利率年一割(原告代払の利息が同法の最高限を超過することは明らかであるからこれを右最高利率に引直す)の利息なること算数上明らかな金一〇、〇〇〇円この合計金三一〇、〇〇〇円の限度においてこれが償還を請求し得べきところ、原告は既に内金四〇、〇〇〇円の弁済を受けたことはその主張自体において自認するのであるから、結局原告は被告に対し金二七〇、〇〇〇円につき償還請求権あることを認むべきであるがその余の請求は失当というべきである。

被告は昭和二三年一一月一七日より昭和二四年五月二日に至る間三回に亘り合計金九〇〇、〇〇〇円を借り受け、内金六九〇、〇〇〇円を返済したから残債務は金二一〇、〇〇〇円に過ぎないと主張するが、右元本数額は本件貸金以前に行われた別口の分を合算したものなることは被告の主張自体と叙上認定事実に徴し明らかでありその主張の返済額の内金六〇〇、〇〇〇円は右既往の別口分元本に対するものであり、内金五〇、〇〇〇円は右に対する利息としていずれも本件貸借成立前に支払の為されたものにかかり、内金四〇、〇〇〇円のみ本件貸金に関するものとして昭和二四年一二月末日支払われたものであることが夫々被告会社代表者本人尋問の結果により認められる。而して右金四〇、〇〇〇円の弁済については既に原告においてこれを自認しているところであつて、これを控除した残額につき被告の償還義務を認定したこと叙上の通りである。従つて被告の右主張は採用できない。

次に被告は営業不振のため支払可能のときまで本件債務の履行を猶予せられたし、利息については昭和二四年一二月二九日以後の分は免除を受けたと主張し、被告会社代表者本人はこれに副う如く供述するけれども、原告本人の供述及び成立に争のない甲第四号証の一、二に照らし措信できないし他にこれを認めるに足る証拠はない。従つて被告の右主張も採用しない。

尚原告の本件立替支払は被告の委託によるものでなかつたことはさきに認定したところであるから、これに対する被告の民事法定利息相当の損害金債務については、原告本人の供述に徴し同人より被告に右立替金の償還請求を為したときと推認せられる昭和二五年二月一五日附遅滞の効力が発生したものと看るべきであるから、原告は同日以降につき右損害金の請求を為し得るものといわなければならない。

以上の次第につき、原告の請求は金二七〇、〇〇〇円とこれに対する昭和二五年二月一五日以降完済に至るまで年五分の割合による損害金の支払を求むる限度においてこれを正当として認容し、その余の部分については失当として棄却し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第九二条、仮執行の宣言につき同法第一九六条第一項を適用し主文の通り判決する。

(裁判官 畑健次)

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